b型肝炎に関する疫学を知ろう

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医学研究の一つとして古くから行われているものに疫学研究があります。

b型肝炎に関心を持っている人は疫学について学んでみると様々なことが見えてくるでしょう。日本では国立感染症研究所で様々な病気の疫学調査が行われてきています。

b型肝炎についても例外ではないので、どのような内容になっているかを知っておきましょう。


そもそも疫学とは何か

b型肝炎に関する疫学について見てみる前に、まず疫学とは何かを理解しておくことが重要です。疫学とはある集団を見たときに病気への感染などの事象が発生している頻度や分布について調べ、その現象を引き起こしている原因を明らかにする学問です。

そして、その問題点を解明することにより、有効か対策を生み出すことを目指しています。分布の取り方によって導き出される結論が異なるため、どのような条件設定をするかによって想定できる対策も違ったものになります。

分布は空間的なものでも、年齢や性別によるものでも、職業や過去の病歴によるものでも構いません。複合的に条件を設定して分布を調べることにより、一定の傾向を見出せると原因が見えてくるようになり、対策を立てられるようになります。

例えば、都道府県別に50代の人で高血圧になっている人がどれだけいるかを調べてみると、ある県の人だけ罹患率がかなり高いというデータが得られたとします。そこでその県の食習慣や運動習慣についての調査を行い、結果として塩分の多い漬物やうどんなどをよく食べる習慣があるとわかると原因が判明したと言えるでしょう。

また、その県で実は40代では極めて高血圧患者が少ないというデータもあったとします。そこで40代の人の食習慣について調査してみると、反面教師で塩分の多い食品を避ける習慣があり、高血圧対策として野菜を食べたり、運動をしたりするのを心がけている人も多いというアンケート結果が得られたというケースも考えられます。

結論としては高血圧対策には減塩食を推進し、野菜を食べる習慣を作り、適度に運動するのが良いという可能性が示唆されたと言えます。このようにして特に医学の分野では健康の促進や病気の対策として何をすべきかを解明する方法論が疫学です。

疫学は感染症対策に欠かせない

b型肝炎のような感染症対策を考える上では疫学は重要な役割を果たします。生活習慣病のように個人の生活習慣が原因になって発症する病気の場合には、集団としての傾向があまり病気の発症に深い関連性を持たないことが多いでしょう。

しかし、感染症の場合には原因となる病原体が存在していて、それが人や動物などから人へと感染することによって病気が広がっていきます。病院や高齢者福祉施設、学校や保育園などで集団感染が問題になることもしばしばありますが、病原体を持っているキャリアが他の人に接するときに感染リスクが高まるため、大勢が集まる場所では気をつけなければならないのです。

集団感染としてよくニュースに取り上げられていて、すぐに思い浮かぶのはインフルエンザウイルスやノロウイルス、大腸菌o-157などでしょう。特にインフルエンザは毎年のように大流行を起こすことから誰もが知っている感染症になっています。

感染症対策という意味ではインフルエンザの疫学にも意味がないわけではありませんが、実はインフルエンザの場合には他の感染症に比べるとそれほど意義が大きくはありません。毎年違うインフルエンザウイルスが広がってしまうため、どのような場所で集団感染が起こりやすいか、どんなときに感染が広がりやすいかといった情報しか得られないからです。

どこで発生するリスクが高いかについては情報を得ることは困難でしょう。インフルエンザはすぐに治るからというのも疫学の意味が大きくない理由です。しかし、慢性化する場合やキャリアとして長期的にウイルスが体内に存在する場合には大きな意味があります。

b型肝炎も代表的なものなので、どんな疫学調査が行われているかを知っておきましょう。

b型肝炎ウイルスのキャリアに関する疫学

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b型肝炎ウイルスに感染していて発症していないキャリアについての疫学調査は行われています。b型肝炎ウイルスに対する抗原を検査することで、自治体レベルでキャリアの数が確認されてきました。小児に対して検査を行うことで調査してきた自治体が多く、特に母子感染防止事業を積極的に展開してきた自治体では極めてキャリア率が低くなっています。

しかし、どの自治体でもキャリアが著しく減っているわけではありません。2016年10月からb型肝炎のワクチンを0歳児に使用することができるようになりましたが、それ以降に接種したい場合に支援を受けられるかは自治体によって異なります。

キャリアになっているかどうかがわからないままの地域もあるので、b型肝炎の感染の拡大がこれから起こる可能性もあるのが実情です。


b型急性肝炎に関する疫学調査

b型肝炎ウイルスのキャリアは発症したときにまずは急性肝炎になるリスクがあります。全数把握サーベイランスが継続的に行われているため、b型急性肝炎になった患者の数は1999年から現在に至るまで調査結果を閲覧することが可能です。

当初は500名以上もいた急性肝炎の患者もかなり少なくなり、2009年には170人にまで減少しています。

あくまで急性肝炎を発症した数なので慢性化してしまって苦しんでいる人もいるでしょう。しかし、医薬品開発などの影響を受けて着実に発症者数は減ってきているのです。

b型肝炎にうつらないようにする工夫

肝がんなどに関する疫学調査

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国立感染症研究所ではb型肝炎による肝がんや肝硬変、劇症肝炎などに関する疫学調査も行っています。劇症肝炎については感染症法の上では診断時に限って届出をするように呼びかけている影響でどの程度の人数がいるかは正確には把握できていません。

肝がんや肝硬変についても同様のことを言えますが、b型肝炎によって肝がんや肝硬変になった場合には死亡してしまうケースが多いため、人口動態統計によるデータを参考にすることができます。それによるb型肝炎による死亡数は着実に減ってきている状況があると示されています。

肝硬変や肝がんによる死亡者数は全体としては増えていることを考慮すると、b型肝炎によって肝がんや肝硬変を発症して亡くなる人は減ってきていると考えられるでしょう。